見えていない部分、伝えるべき部分を感じ取る力。
DTP Officeという部署で建物の図面集、引渡し図面、モデルガイド、家具シートなどエンドユーザーに手渡すツールを制作しています。制作者という立場で作る一方、仕上がったものは一人のエンドユーザーの視点で見やすさ、わかりやすさ、使いやすさなどをチェックしています。スピードとクオリティのどちらも求められるため、ソフトのショートカット機能を覚え、クオリティに割ける時間を確保しています。「慣れ」はミスを誘発するため、新しい案件がはじまる度に初心に返って純真な気持ちで向き合うように意識しています。設計図には建物に関する多くの情報が詰め込まれています。手を動かす前にまず頭の中で立体的に組み立て、わかりにくい点、表現する際に気を遣うべき箇所などをクリアにしています。与えられた情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、見えていない部分、伝えるべき部分を感じ取ることが大切だと思います。
図や文字を磨き上げ、心揺さぶるものに変化させる。
「感じ取る力」というのは、いわば言語化、可視化されていない部分を想像し、隠れているものをイメージする力です。音楽を聴くことが趣味で、海外アーティストのライブにも頻繁に行きます。音楽は耳で漫然と聴いてしまうと「音」や「声」という情報に過ぎませんが、すべての神経を研ぎ澄まし、頭から足のつま先、肌から感じ取ることで心を揺さぶるものに変化するのだと思います。図面集などのツール制作も同様で、図や文字はスペックであり、デザイナーのフィルターを通すことで、何かを語りかけてくるような臨場感のあるものに変化するのだと思います。伝えるべきことの大枠を大胆に切り取りながら、粘り強く繊細に磨き上げていくような仕事なのです。伝統工芸の職人が仕上げに時間をかけるように、配置であればミリ単位で微調整し、色であれば数%にこだわり、今日は昨日よりも良いものを、明日は今日よりも良いものを制作していきたいと思います。